2010年09月30日
祖慶剛の楽理4
7,「振い」ついて
師は「世礼工工四には老老、上上、尺尺のような1/4拍の二音間に振いがおびただしく使用されている。これは下吟から上吟に変えなさいという意味に使われていると思われる。それだけのことならば、すぐ上吟にすればよい。強いて下吟の音をわざわざ入れる必要はない。初心者は譜を見て歌うから自然に、二音を発声するようになり、必然的にオオ、イイ、ウウなど、ゴツゴツした発音になる。違った二音間の振いも同じである。この短時間で首を振り回す事はできない。従って、1/4拍間の振いの記号はなくていい。例えば、キユーヌーの上 尺尺…工ーは上 尺…工ーで十分である。尺尺があるからキ ユウーヌーとなり、ユーと一語で優しく発声するところをユウーと二語に発声するから必然的にゴツゴツになってしまう。結局1/4拍の振いの記号は不要でむしろ害になる。」といい振いを否定している。
楽典では振いを「顎で記号の形の如く半円を描く。速度のやや早く深いのを振い、遅く浅いのを廻いという。廻いの次には多くは次第上げが来る。」と定義し、「速度のやや早く深いのを振い」とは1/4拍間の異なる二音の振いのことで、「速度の稍遅く浅いのを廻い」ということは1/4拍間の同音の振いのことを廻いと解釈していい私は思う。振いは異なる二音を円滑にアア、イイ、ウウで音高を上げるが、同音の振い(廻い)は喉を一寸と圧して単音でア、イ、ウで発声し、振いは歌曲を円滑にするための大事な節入れの一つであり、廻いは強調吟位で歌曲を重厚づける発声法で、次の上吟や次第上げを生かす発声技巧の一つであると考えている。しかし、廻いは世礼工工四では頻繁に使われている発声符号であるが意外と無視され意識されていないように思う。異なる二音の振いは表拍子(清音)で歌われることはない。表二分五厘、表五分、裏拍子(濁音)、裏五分にある。それは節殺しをさけるためであり、それぞれその使い分けがあることに注目したい。同音の振い即ち廻いは昔節では表拍子(清音位)の上絃、五絃の弾絃時にあって表五分位の上吟に作用しているが、節殺しという観点からは廻いを取り直吟にして歌い工工四を簡素化する意味で省いていいのではないかと考える。かぎゃで風節型では裏拍子位に廻いはある。上で述べたように次の上吟や次第上げに作用する大事な発声法である。又、同音の振いが表二分五厘、五分にあるとき、世礼がいう廻いを強くしたもの即ち内刳と私は解釈している。
8,「次第上げ」について
世礼工工四伊野波節の次第上げを例に師は次のように説明している。「次第上げは尺……工の一拍あるいはそれ以上を緩やかに高めるときに用いる。
(イ)尺………工、(ロ)尺…尺…工、(ハ)尺…工…工の三通りに使い分けている。(イ)は疑問なし。(ロ)の場合、間にある尺は下吟尺から上吟尺にして工の高さに次第に上げなさいということだと思うが、その必要はなく(イ)のようにして良い。(ハ)は五分位に工があるために一拍の次第上げが半白の次第上げに変わってしまうおそれがある。譜の通りに歌うと五分位の工が上吟だと解釈されるから、譜の訂正が必要なのである。要するに低い音から高い音に直ぐに上げるのではなく、緩やかに高い音に上げるのだから、五分位の工は省略し、尺……工でいい。」 世礼楽典では「次第上げには種々あって姿勢は次第に上げる姿勢を取ることは変わりはないが、音高は尺…工ならば尺の上音を持続して最後に工の上音に上げる。即ち尺…尺工である。次第上げ次第下げの名称が音に附せられた名称ではなく発声法である。」としている。しかしながら伊野波節での次第上げがイロハのそれぞれ附記されているのは疑問が残る。師の説の尺…工の(イ)に統一すべきということに同感である。
野村流古典音楽保存会の工工四では「四…上。四の下吟から上の上吟へ次第に上げる。」と定義してある。その為に、次第上げという文字を直訳して音が次第に上げると解釈してる人たちがいる。
次第上げは本調子かぎゃで風節型(箏本調子)では毛厘…合(厘…合)、合老…四(老…四)、上尺…工(尺…工)、工六…七(六…七)。二揚調子干瀬節型(箏二揚本調子)では…四、四中…工(中…工)、五七…八(七…八)が主流で何れも弱音域内での半音間の上行発声法である。イメージ的には左の譜のようにデクレッセンドで次第に声を細くし円滑に上げると良いだろう。
9,おわりに
祖慶師は40数年世礼工工四を基に野村流を学び、その学術研究に心血を注いでこられた。久田友栄師匠や先輩方の残されたレコード、録音テープ等を資料として比較研究、分析の結果をまとめ機会ある事に発表し、師がまとめ上げた上中下巻の教本は貴重な稽古本(参考書)として活用されてきた。同書の7章からなる音楽理論は是非一読してもらいたい論考である。
師が4回シリーズで投稿された内容においては私見を交えながら検討してきたが、退会を強いられるほどのものではないと思う。人生の終焉の間際まで野村流のことを案じ気づかっておられた師の冥福を祈るためには、世礼工工四を中心に勉強される野村流の方々が世礼楽典の絃楽譜、声楽譜を細微にわたるまで研究をし、完璧な教本となる工工四の刊行を心から希望している。
祖慶剛の楽理は山内秀吉HP
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師は「世礼工工四には老老、上上、尺尺のような1/4拍の二音間に振いがおびただしく使用されている。これは下吟から上吟に変えなさいという意味に使われていると思われる。それだけのことならば、すぐ上吟にすればよい。強いて下吟の音をわざわざ入れる必要はない。初心者は譜を見て歌うから自然に、二音を発声するようになり、必然的にオオ、イイ、ウウなど、ゴツゴツした発音になる。違った二音間の振いも同じである。この短時間で首を振り回す事はできない。従って、1/4拍間の振いの記号はなくていい。例えば、キユーヌーの上 尺尺…工ーは上 尺…工ーで十分である。尺尺があるからキ ユウーヌーとなり、ユーと一語で優しく発声するところをユウーと二語に発声するから必然的にゴツゴツになってしまう。結局1/4拍の振いの記号は不要でむしろ害になる。」といい振いを否定している。
楽典では振いを「顎で記号の形の如く半円を描く。速度のやや早く深いのを振い、遅く浅いのを廻いという。廻いの次には多くは次第上げが来る。」と定義し、「速度のやや早く深いのを振い」とは1/4拍間の異なる二音の振いのことで、「速度の稍遅く浅いのを廻い」ということは1/4拍間の同音の振いのことを廻いと解釈していい私は思う。振いは異なる二音を円滑にアア、イイ、ウウで音高を上げるが、同音の振い(廻い)は喉を一寸と圧して単音でア、イ、ウで発声し、振いは歌曲を円滑にするための大事な節入れの一つであり、廻いは強調吟位で歌曲を重厚づける発声法で、次の上吟や次第上げを生かす発声技巧の一つであると考えている。しかし、廻いは世礼工工四では頻繁に使われている発声符号であるが意外と無視され意識されていないように思う。異なる二音の振いは表拍子(清音)で歌われることはない。表二分五厘、表五分、裏拍子(濁音)、裏五分にある。それは節殺しをさけるためであり、それぞれその使い分けがあることに注目したい。同音の振い即ち廻いは昔節では表拍子(清音位)の上絃、五絃の弾絃時にあって表五分位の上吟に作用しているが、節殺しという観点からは廻いを取り直吟にして歌い工工四を簡素化する意味で省いていいのではないかと考える。かぎゃで風節型では裏拍子位に廻いはある。上で述べたように次の上吟や次第上げに作用する大事な発声法である。又、同音の振いが表二分五厘、五分にあるとき、世礼がいう廻いを強くしたもの即ち内刳と私は解釈している。
8,「次第上げ」について
世礼工工四伊野波節の次第上げを例に師は次のように説明している。「次第上げは尺……工の一拍あるいはそれ以上を緩やかに高めるときに用いる。
(イ)尺………工、(ロ)尺…尺…工、(ハ)尺…工…工の三通りに使い分けている。(イ)は疑問なし。(ロ)の場合、間にある尺は下吟尺から上吟尺にして工の高さに次第に上げなさいということだと思うが、その必要はなく(イ)のようにして良い。(ハ)は五分位に工があるために一拍の次第上げが半白の次第上げに変わってしまうおそれがある。譜の通りに歌うと五分位の工が上吟だと解釈されるから、譜の訂正が必要なのである。要するに低い音から高い音に直ぐに上げるのではなく、緩やかに高い音に上げるのだから、五分位の工は省略し、尺……工でいい。」 世礼楽典では「次第上げには種々あって姿勢は次第に上げる姿勢を取ることは変わりはないが、音高は尺…工ならば尺の上音を持続して最後に工の上音に上げる。即ち尺…尺工である。次第上げ次第下げの名称が音に附せられた名称ではなく発声法である。」としている。しかしながら伊野波節での次第上げがイロハのそれぞれ附記されているのは疑問が残る。師の説の尺…工の(イ)に統一すべきということに同感である。
野村流古典音楽保存会の工工四では「四…上。四の下吟から上の上吟へ次第に上げる。」と定義してある。その為に、次第上げという文字を直訳して音が次第に上げると解釈してる人たちがいる。
次第上げは本調子かぎゃで風節型(箏本調子)では毛厘…合(厘…合)、合老…四(老…四)、上尺…工(尺…工)、工六…七(六…七)。二揚調子干瀬節型(箏二揚本調子)では…四、四中…工(中…工)、五七…八(七…八)が主流で何れも弱音域内での半音間の上行発声法である。イメージ的には左の譜のようにデクレッセンドで次第に声を細くし円滑に上げると良いだろう。
9,おわりに
祖慶師は40数年世礼工工四を基に野村流を学び、その学術研究に心血を注いでこられた。久田友栄師匠や先輩方の残されたレコード、録音テープ等を資料として比較研究、分析の結果をまとめ機会ある事に発表し、師がまとめ上げた上中下巻の教本は貴重な稽古本(参考書)として活用されてきた。同書の7章からなる音楽理論は是非一読してもらいたい論考である。
師が4回シリーズで投稿された内容においては私見を交えながら検討してきたが、退会を強いられるほどのものではないと思う。人生の終焉の間際まで野村流のことを案じ気づかっておられた師の冥福を祈るためには、世礼工工四を中心に勉強される野村流の方々が世礼楽典の絃楽譜、声楽譜を細微にわたるまで研究をし、完璧な教本となる工工四の刊行を心から希望している。
祖慶剛の楽理は山内秀吉HP
http://www.fs-hanae.com/hideyosi.htmでUPしてあります。
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